


民宿みかん
愛媛県松山市 2025年4月竣工
構造規模:木造2階建、延床面積199.9㎡
用途 :簡易宿所
施工 :(株)エムプラス建築工房
撮影 :吉田真也(ドット グラフィック)













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巡礼と旅の交差点に寄り添う、木のぬくもりの宿
― 松山・石手寺前に新たな木造民宿が誕生 ―
松山市・道後温泉のほど近く、四国霊場第五十一番札所・石手寺の参道沿いに、新たな木造二階建ての民宿が誕生した。お遍路さんをはじめ、サイクリストやツーリング愛好者など、多様な旅のスタイルを受け入れるこの宿は、旅人の心と体をやさしく包み込む設計思想に貫かれている。
浴室は設けず、代わりに男女別の個別シャワールームを設置。道後温泉という地域資源を活かす設計としつつ、利便性にも配慮した。素泊まり形式の宿ながら、共用のキッチンとダイニングスペースを備え、持ち込んだ食材や市街で購入した弁当などを自由に楽しむことができる。また、館内では冷凍弁当の販売も行っており、到着が遅くなった旅人にも配慮されている。
客室はシングル4室、ツイン2室、さらに2段ベッドを配した4人部屋を1室設け、多様な旅の形に対応。各室は遮音性能に優れた建具・壁を採用し、巡礼や長距離走行で疲れた体を静かな環境で休められるよう設計された。
内装には、愛媛県産の桧を天井材として用い、香りと木目の美しさが安らぎを演出する。木製の障子や柔らかな間接照明も取り入れられ、和の趣を残しながらも現代的な快適性を兼ね備えた空間に仕上げられている。玄関まわりには広めの土間を設けており、自転車やバイクも安心して駐輪可能だ。
“泊まる”という行為に、地域の空気や素材のぬくもりを感じながら、旅の途中に心と身体をリセットできる場所。それがこの宿の設計理念である。